介護業界での転職事情

業界全体的に人手不足
ここ数年、介護業界では人手不足が常態化しています。その一番の原因が少子高齢化です。政府が発表している「令和元年版高齢社会白書」によると、2018年時点の総人口に占める65歳以上の割合は28.1%で、年々上昇し続けています。
一方で15~64歳人口は1995年をピークに減少し続けており、2018年時点の総人口に占める割合は59.7%となっています。このまま高齢者が増え続け、介護を担う若者が減少し続ければ、介護業界における人手不足はますます加速するでしょう。
また、賃金が低い、仕事内容が精神的・体力的にきついなど、介護業界に対するイメージの悪さから、仕事として介護職を選ぶ人が少ないというのも原因のひとつです。
賃金に関しては介護保険制度で売上の上限が決まっていることが主な要因のため、国レベルでの大規模な政策が求められます。仕事内容に関しては当然人によって向き・不向きがありますから、事業所は、職場見学や1日体験などを積極的に受け入れるなどの工夫が必要でしょう。
とは言え介護の仕事は「人の役に立ちたい」「社会貢献にもなる仕事がしたい」という思いがある人にとってはまさにぴったりの仕事で、やりがいを感じられることは間違いありません。
さらに、人手不足ということは、逆に言えば働き口が豊富にあるということです。多くの事業所で必要な人材を確保できておらず引く手あまたの状態なので、就職先・転職先が見つからないという可能性もありません。ほかの求職者との競争率も低いため、自分の希望や条件に合った職場を選びやすくなるという利点もあります。
現職・求職者が悩んでいること
さて、上記では人手不足の原因として少子高齢化と介護の仕事を選ぶ人が少ないという点について指摘しましたが、離職率が高いというのもまた、介護業界の人手不足に拍車をかける原因のひとつとなっています。
離職の原因として多いのが、結婚や出産など、ライフスタイルの変化です。子どもが熱を出すたびに休ませてもらうのが後ろめたくて辞めてしまったとか、夜勤のせいで夫婦間のコミュニケーションが取れないため辞めてしまったなど、介護職と家庭の両立はなかなか難しいようです。
他にも、人間関係の悩みから離職したという人も少なくありません。幅広い年齢やさまざまな経験を持った人が働いている介護の現場では、価値観の違いから職員同士で衝突してしまうこともあるでしょう。また、職員同士だけでなく、利用者や利用者家族との人間関係に悩むケースも多いようです。
もし、介護の仕事自体が嫌だという場合は別の業界へ転職するべきですが、ライフスタイルの変化や職場環境、労働条件などが理由で離職したい・離職したのであれば、ぜひ自分の希望に合う職場を見つけて、介護の資格や経験を活かした転職をすることをおすすめします。
自分に合った職場や環境を選ぶことが大切
ここまで、介護業界は売り手市場で転職がしやすいものの、さまざまな理由から長く続かない人が多いということについて述べてきました。介護業界で転職をするのであれば、なるべく離職せずに済むよう、自分の希望や条件に合った事業所を選ぶことが大切です。
ただ、ひとくちに介護業界と言っても、施設の種類ごとに仕事内容や特徴が大きく異なります。ですから、まずはそれぞれの施設の特徴や仕事内容を把握し、希望に近い施設を絞ってから、その中で条件に合う事業所を選ぶのが良いでしょう。
■特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム(特養)は社会福祉法人や地方自治体などによって運営されている公的な施設で、自宅での生活が困難な要介護の高齢者が入居します。食事・入浴・排泄の介助やレクリエーションはもちろん、看護師や理学療法士と協力しながら、日々の健康管理やリハビリテーションのサポートなども行います。
介護度の高い高齢者が入居する施設のため、一定のスキルや経験が求められます。その分待遇面が充実していることが多いので、安定した収入を得たい方には特におすすめと言えます。
■介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、食事・入浴・排泄の介助やレクリエーションなど、仕事内容は特養と似ているところが多いですが、一番の違いは民間企業が運営しているという点です。入居費用や月額費用は施設によって幅がありますが、いずれにしてもサービスの満足度を重視する傾向があります。
そのため、一辺倒な介護ではなく、入居者ひとりひとりに合ったきめ細かいサービスを提供するなど、質の高い介護スキルや対応力を求められます。研修や人事制度、福利厚生が充実しているケースが多いので、そのような点を重視する方には特におすすめと言えます。
■デイサービス・デイケアサービス
デイサービスは食事・入浴・排泄の介助などを行うことによって、在宅介護をしている家族の負担を減らすことが目的の施設です。一方、デイケアサービスでも食事・入浴・排泄の介助などは行いますが、あくまでリハビリテーションを受けることを目的とした施設であるという違いがあります。
デイサービスは比較的介護度の低い高齢者が通う施設であり、デイケアサービスは看護師や理学療法士が主に活躍する施設であるため、介護スキルや経験の少ない方でも働きやすいでしょう。また、双方の施設とも夜勤がないため、プライベートを重視したい方には特におすすめと言えます。
■グループホーム
グループホームとは、認知症の高齢者が共同生活を送る施設です。認知症の進行を遅らせたり、入居者が可能な範囲で家事に参加してもらうなどして、ひとりひとりが自立した生活を送れるよう支援することが主な仕事内容です。必要な場合には食事・入浴・排泄の介助なども行います。
いわゆる”介護”よりも、入居者に危険がないかを見守り、自立を支援する仕事内容がメインとなるため、介護スキルや経験の少ない方でも働きやすいでしょう。認知症ケアに関心が高い方はもちろん、マニュアル通りの働き方が苦手な方や、入居者ひとりひとりとじっくり向き合いたい方には特におすすめと言えます。
■サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、自立度の高い高齢者のためのバリアフリー賃貸住宅です。いわゆる介護施設ではなく、見守り(安否確認)や生活相談などが主な仕事内容になります。
サ高住では介護のスキルを活かす場面があまりないため、よく知らずに転職してしまうと後悔することになりかねません。入浴や排泄の介助など、体力的にハードな業務を避けたい方にはおすすめと言えます。
■訪問介護
利用者の自宅へ訪問し、食事・入浴・排泄の介助や、料理・掃除・洗濯などを行うのが訪問介護です。ケアマネージャーの作成するプラン通りに仕事を行い、利用者の状況や実際に行った業務内容をケアマネージャーに報告するというのが主な流れになります。
訪問介護では1日に複数のお宅へ訪問するため、1軒1軒の滞在時間はそれほど長くありません。シフトの融通が利きやすいため、少ない日数や短時間の勤務をしたい方、プライベートを重視したい方には特におすすめと言えます。
■病院
病院における介護職員の仕事内容としては、食事・入浴・排泄の介助と言った介護業務はもちろん、掃除やシーツ交換などの身の回りのお世話から、カルテ整理や医療器具の管理と言った看護師のサポートまで、幅広い業務を行います。
介護施設では経験できない、医療機関ならではの業務内容を経験することができるので、医療の現場で働いてみたい方、将来的に看護師資格の取得を目指している方などにおすすめと言えます。
ポン
- 介護業界における人手不足は加速しているため働き口が豊富にある
- 離職の原因はライフスタイルの変化が多い
- 離職しないで済むように希望や条件に合った事業所を選ぶことが大切
転職活動するなら転職サイト・転職エージェントどっちがいい?

さて、上記では介護業界で働く方の転職先として考えられる主な施設についてご紹介しました。ただ、同じ種類の施設でも事業所によって仕事内容が大きく異なるということも珍しくないため、その事業所が本当に自分に合った職場環境かを調べるのには限界があります。
効率的に転職先を探したいのであれば、転職サイトや転職エージェントに登録するのがおすすめです。これらの転職支援サービスを利用すれば、業務内容や労働条件だけでなく、事業所ごとの特徴や雰囲気なども知ることができます。
ところで、「転職サイト」と「転職エージェント」の違いについてはご存じでしょうか?ここからは、双方の違いやメリット・デメリットなどについて解説していきます。
【転職サイト】
■メリット
参照できる求人情報が多いのが転職サイトのメリットです。移動中やちょっとした空き時間にも、スマホから簡単に転職活動を行うことができます。サイトによっては、会員登録をすることで、希望条件に合った求人の紹介メールや、スカウトメールを受け取れることもあります。
■デメリット
転職サイトでは、プロに履歴書のチェックなどをしてもらうことができません。介護業界は人手不足とは言え、やはり好条件・好待遇の事業所には人気が集中します。競争率の高い事業所からの内定を勝ち取るためのアドバイスをもらえないというのが転職サイトのデメリットです。
■どんな人におすすめ?
求人検索から応募、面接日の調整まですべて自分で行うため、自分のペースで転職活動をしたいという方には転職サイトがおすすめです。
■登録から内定までの流れ
転職サイトに登録したら、さっそく求人を探すところから始めます。職種や条件などで絞り込むと、より希望に近い求人が探しやすいでしょう。応募したい求人が見つかったら、専用フォームに必要事項を入力して応募します。最近ではWEB上で履歴書や職務経歴書が作成できる転職サイトも多くなっています。
書類選考を通過すると事業所の担当者から連絡が来ますので、面接の日程を調整します。面接終了後、採用が決定すると内定の連絡がありますので、入社の意思を伝えましょう。ここまでが介護職以外も含む一般的な求人サイトの流れになりますが、サイトによっては細かく違う場合もあります。基本的に登録するだけなら無料の場合がほとんどですので、複数のサイトを登録してそれぞれのサイトで流れを確認しておくといいでしょう。
【転職エージェント】
■メリット
キャリアアドバイザーから応募書類のチェックや面接対策などをしてもらえるのが転職エージェントのメリットです。求職者と事業所との間に立ち、労働条件や年収の交渉なども行ってくれます。
■デメリット
キャリアアドバイザーの目的は求職者に合った求人を紹介し、内定につなげることです。そのため、求職者の経歴やスキルを鑑み、採用の可能性が低いと判断した求人は紹介してくれないというデメリットがあります。採用の可能性が低くてもより良い求人に挑戦したいという方にとってはデメリットでしょう。
■どんな人におすすめ?
自分ひとりでの転職活動が不安な方や、キャリアアドバイザーからの手厚いサポートを受けたいという方には、転職エージェントがおすすめです。
■登録から内定までの流れ
まずは氏名や年齢、保有資格、希望条件などの情報を登録します。その情報を基に、紹介できる求人があるかどうかをエージェントがチェックし、問題がなければ面談の連絡があります。面談では、転職理由や希望条件などについて詳しくインタビューされます。
後日、インタビューで得た情報を踏まえた上で希望にマッチする求人情報を紹介してくれますので、応募するか否かを伝えます。応募の手続きはすべてエージェントが行ってくれます。書類選考を通過すると、いよいよ面接です。面接の日程調整もエージェントが代行してくれます。採用が決定すれば、エージェントから内定の連絡が来ますので、改めて入社の意思を伝えましょう。
どっちのメリットも兼ね備えた会社がある!?
参照できる求人数が多く、自分のペースで転職活動を進めることができる「転職サイト」と、応募書類のチェックや面接対策と言った手厚いサポートがあり、日程調整や条件交渉を代行してくれる「転職エージェント」は、どちらも魅力的ですよね。
実は、そんな転職サイトと転職エージェントのメリットを兼ね備えた会社も存在しているということをご存じでしょうか。そのような会社であれば、「キャリアアドバイザーのサポートは受けたいけど、なるべく多くの求人情報を見てみたい」など、さまざまなニーズに柔軟に対応することができます。
転職サイトと転職エージェントどちらに登録すれば良いか迷っているという方は、ぜひ双方のメリットを兼ね備えた会社に登録してみてはいかがでしょうか。このサイトでもそのような会社をいくつかご紹介していますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
ポン
- 転職サイトは参照できる求人情報が多く、自分のペースで転職活動ができる
- 転職エージェントはキャリアアドバイザーにサポートしてもらえる
- 転職サイトと転職エージェントのメリットを兼ね備えた会社が存在する
転職活動成功の秘訣!

秘訣1 事前準備
転職活動を成功させるためにはまず、転職の目的や目標を明確にすることが大切です。「給与アップしたい」「プライベートと両立できる職場で働きたい」など具体的な方針を決めることで、どんな事業所を選べば良いかが見えてきます。
同時に、自己分析や将来のキャリアについても考えを深めましょう。それらをあらかじめ言葉にしておくことで面接の際にも役立ちますし、転職後のミスマッチを防ぐことにもつながります。
秘訣2 転職サイト・エージェント選び
登録する転職サイト・転職エージェント選びも慎重に行いましょう。あらゆる業種の求人を取り扱うところよりも、介護職に特化したところを選ぶのがおすすめです。転職サイトも転職エージェントも無料で利用できるところがほとんどなので、いくつか登録してみると良いでしょう。
秘訣3 活動期間の設定
一般的に、転職活動期間は3か月~6か月くらいという方が多いようです。もちろん、「今すぐ転職したい」と1か月未満で転職先を決める方もいれば、「いいところがあれば転職したい」と1年くらい余裕をかけて転職活動を続ける方もいます。
人によって最適な期間は異なりますが、現在の職場での業務の引き継ぎ準備や、転職活動のスケジューリングを明確にするためにも、あらかじめ活動期間を設定しておいたほうが良いでしょう。
秘訣4 面接対策
面接対策も万全にしておきましょう。よく聞かれる質問のひとつが、前職の退職理由です。同じ理由で辞めてしまわないか、長く続けてもらえるかなどを確認したいという意図があります。「残業が多くてプライベートの時間が確保できなかったから」という理由であっても、正直に答えてはいけません。「資格取得を目指せる職場へ転職したいから」など、あくまで前向きな転職だということをアピールしましょう。なお、契約満了や事業所の倒産などは会社都合になりますので、正直に伝えて問題ありません。
ほかにも、志望動機や今後のキャリアプランについても必ずと言っていいほどよく聞かれます。志望動機が給与の高さや待遇の良さだけでは、「ほかの事業所でも良いのでは?」と思われてしまいます。応募先についてきちんと下調べをして、応募先の事業所でなければならない理由を答えられるようにしましょう。
今後のキャリアプランについては、抽象的なものや壮大すぎる目標を答えるのはNGです。具体的、かつ応募先の事業所で実現できそうな目標を答えるようにしてください。ただ、謙虚すぎたり、自分を卑下するような言い方は避けてください。あくまでも面接は自分をアピールする場なので、積極的な姿勢ややる気を見せるようにしましょう。
ポン
- 転職の目的や目標を明確にする
- 介護職に特化した転職サイトや転職エージェントを選ぶ
- 転職活動の期間を設定しておく
- 前職の退職理由や応募先の事業所を選んだ理由などを答えられるようにしておく
まとめ
ここまで、介護業界の現状や各種介護施設の特徴、転職サイトと転職エージェントの違い、転職を成功させるためのポイントなどについて解説してきました。人手不足で需要の高い業界とは言え、転職活動は慎重に行い、自分に合った職場を見つけることが大切です。
このサイトでは、大阪でおすすめの転職サイト・転職エージェントのご紹介もしていますので、ぜひそちらも参考にしてみてください。ひとりでも多くの方が理想通りの転職を成功させ、介護の現場で活躍されることを願っています。